ピロリ菌について
ピロリ菌は胃粘膜の中に感染し、胃・十二指腸潰瘍、萎縮性胃炎、胃がんなど様々な疾患を引き起こす原因となります。特に、ピロリ菌感染による慢性萎縮性胃炎が原因で胃がんの発症に繋がると分かっていますので、注意が必要です。また、胃・十二指腸潰瘍は、一度体内に侵入したピロリ菌が残り続けることで、再発を繰り返してしまいます。
ピロリ菌は適切な治療によって除菌することができますので、ぜひ一度ご相談ください。
幼少期に公衆衛生が未発達だった50代以上の方はピロリ菌感染のリスクが高く、一方で公衆衛生が整った時代に生まれた若年層の感染率は低い傾向にあります。ピロリ菌感染によって長期的に様々なリスクがありますが、胃に関する疾患の発症防止のために40歳を超えたらピロリ菌感染検査や胃カメラ検査を受けることをお勧めします。
ピロリ菌の原因
不衛生な水を飲むことや、無自覚で感染している方と箸などを使いまわすこと、幼児に離乳食を与える際に噛んで柔らかくすることなどによって、ピロリ菌感染が起こると言われており、多くの場合は5歳ごろまでの幼児期に感染するとされています。 近年では、公衆衛生が完備されたため感染率は激減していますが、一方で50歳以上の方は高齢になればなるほど感染率も高い傾向にあります。最新の研究結果によると、ピロリ菌が持つウレアーゼという酵素の働きで胃酸を中和することで、胃の中に寄生することができると考えられています。
ピロリ菌の症状
胃粘膜には痛覚が通っていないため、ピロリ菌に感染しても自覚症状が乏しいとされています。ピロリ菌感染によって胃粘膜がダメージを受け、胃の炎症が長期化しても、痛みを感じないために感染に気づかないとされています。 ピロリ菌感染を放置すること、胃炎が慢性化して胃粘膜が変性して腸上皮化生という状態となり、がん化するリスクが高まります。
ピロリ菌の検査EXAMINATION
ピロリ菌検査の方法としては、「胃カメラを使用する方法」と「胃カメラを使用しない方法」の2パターンに分類されます。 なお、これらの検査を保険適用の扱いで受けるためには、胃カメラ検査を受けて胃炎や胃がんの発症有無を確認する必要がありますので、ご注意ください。
胃カメラを使用する検査法
胃粘膜の状態を直接観察し、疑わしい病変の組織採取を行って生検に回すことが可能です。
培養法
採取した組織を培養してピロリ菌に感染しているかどうか確認します。正確性が非常に高い方法ですが、結果が分かるまで1週間程度の時間が必要となるため、実際の現場では実施することは稀です。
鏡検法
採取した組織をホルマリンに漬けて、顕微鏡で精緻に観察します。
迅速ウレアーゼ試験
採取した組織を特殊な検査薬の中に浸し、色が変化すればピロリ菌感染陽性となります。その名の通り、すぐに結果が分かるというメリットがあります。
胃カメラ(内視鏡)を使用しない方法
胃の状態を確認せずとも、尿、便、血液の検査で感染の有無を確認できます。容易に検査できる反面、培養法などと比べると精度が低いというデメリットがあります。
血清抗体および尿中抗体法
ピロリ菌に感染すると、体内では抗体が作られます。尿や血液にそうした抗体が含まれていないか検査することで、感染の有無を確認可能です。
便中抗原法
胃粘膜に寄生するピロリ菌の一部は便中に混入することがあるため、便検査によって感染の有無を確認できます。
尿素呼気試験
検査薬を飲んだ状態で風船の中に息を貯めることで、呼気の中の成分から感染の有無を確認します。
ピロリ除菌治療TREATMENT
ピロリ菌感染陽性と分かった場合、抗生剤を飲むことで除菌治療を実施します。具体的には、2種類の抗生剤とその効果を高める胃酸抑制剤の合計3種類の薬を、1週間程度服用して頂きます。1回目の除菌治療から2か月以上経過したタイミングで、治療効果を確認します。 1回目の治療で8〜9割の方は除菌に成功しますが、除菌に成功したからといって胃がんの発症リスクがゼロになる訳ではありません。除菌治療後も定期的に胃カメラ検査を受けることで、胃がんや胃の病気を予防することが大切です。
ピロリ菌除菌治療で気を付けて頂きたいこと
治療効果を高めるために、医師の指示通りに服薬することが大切です。3種類の薬を1日2回、1週間続けて飲むようにしてください。 自己判断で服薬を止めてしまうと、除菌ができないだけでなく、ピロリ菌に薬剤耐性がついてしまうこともありますので、注意が必要です。 また、2回目の治療を行う方は、飲酒を控えるようにしてください。
ピロリ菌除菌治療で要注意の方
以下に該当する方は、必ず治療前にお知らせください。
- 過去に薬を飲んでアレルギー症状が出たことがある
- ペニシリンなどの抗菌薬を使った際に、アナフィラキシーなどの重度のアレルギー症状が出たことがある
- 風邪薬や抗菌薬で副反応が出たことがある
ピロリ除菌治療の副作用
軽い下痢や柔らかい便などの消化器症状、味覚障害が起きた場合
自己判断で服薬量や回数を調整せずに、必ず1週間は服薬を続けるようにしましょう。 なお、症状が悪化した場合は、かかりつけ医や薬剤師までご相談ください。
発熱や腹痛を伴う下痢、粘膜や血液が混ざっている下痢、発疹の場合
速やかに服薬を中断し、かかりつけ医や薬剤師へご相談ください。 ご不明点があれば遠慮なくお申し付けください。