アルコール性肝障害は、習慣的に飲酒する人が大量にアルコールを摂取した際に発症する疾患です。通常、肝臓は痛みを感じにくい臓器ですが、アルコール性肝炎を発症すると、腹部の右上部に痛みを感じることがあります。
血液検査の結果は、飲酒以外の原因による急性肝炎と似ていますが、大量飲酒の歴があれば診断は比較的容易です。
大量に飲酒する人だけが発症するわけではなく、特に女性は少量の飲酒でも男性よりも発症リスクが高いとされています。アルコール性肝炎を一度発症すると再発しやすく、進行すると肝硬変に至ることもあります。
また、アルコール依存症が関与している場合も多く、その場合には専門的な治療が必要となります。

肝細胞（肝臓を構成する主な細胞）にトリグリセリドという脂肪成分が過剰に蓄積された状態を脂肪肝と呼びます。
脂肪肝の原因は多岐にわたり、肥満、2型糖尿病、過度の飲酒、薬剤、ウイルス性肝炎などが関与していることが知られています。特に、肥満や急激な体重増加が原因で発症する脂肪肝は非アルコール性脂肪肝疾患（NAFLD：ナッフルディ）と呼ばれます。
NAFLDの患者数は非常に多く、アジア人成人の罹患率は男性で32.2～41.0％、女性で8.7～17.7％と報告されています。さらに、日本人の健康診断受診者を対象にした研究では、NAFLDの罹患率は2001年の18％から2009～2010年には29.7％に増加しており、年々増加傾向にあります。

非アルコール性脂肪肝炎（NASH：ナッシュ）は、脂肪の蓄積に加えて肝臓に炎症が生じた状態を指します。NAFLDの患者の約1～2割がNASHとされ、進行すると肝機能の低下を引き起こします。
NASHは初期段階では自覚症状がほとんどありませんが、数年から十数年の経過を経て肝硬変に進行することがあります。肝硬変に至ると、倦怠感、食欲低下、むくみ、腹水による腹部膨満感、黄疸（白目や皮膚の黄変）などの症状が現れます。
一度肝硬変に進行すると、治療を行っても元の健康な状態に回復することはできません。そのため、早期発見と適切な対応が非常に重要です。

肝臓に脂肪が蓄積しやすい体質には遺伝的要因が関与していることが分かっています。特に、PNPLA3遺伝子に変異を持つ人（日本人の約20％）は、肥満でなくても脂肪肝や腎機能障害を発症しやすいことが確認されています。

お酒を飲む方

• 禁酒または飲酒量の制限

肥満の方

• 食事療法（間食の制限、栄養バランスに配慮した食生活）
• 運動療法（30分以上の散歩や有酸素運動を習慣化）

1日に必要な摂取エネルギーは、標準体重に25～30kcalを掛けて計算できます。この目安を参考に、適切な食事量を心がけましょう。標準体重は「身長（m）×身長（m）×22」で算出できます。
例えば、身長170cmの方の場合、標準体重と摂取エネルギーの目安は以下のようになります。

適切なエネルギー摂取量を守るために、蒸し料理や網焼きなどの調理法を取り入れて、余分な脂肪を減らすと良いでしょう。

食事の際は、まず野菜が入った副菜や汁物を食べ、その後に肉や魚を使った主菜、最後にごはんやパンなどの主食（炭水化物）を食べるようにしましょう。
野菜を最初に食べることで得られるメリットは二つあります。
一つ目は、野菜を先に食べることで胃がある程度満たされ、過食を防ぎやすくなることです。
二つ目は、食後の血糖値の上昇を緩やかにすることです。血糖値が急激に上がると、インスリンというホルモンが分泌され、余分な糖分が中性脂肪として蓄積される原因になります。
また、野菜は1日350g以上を目安に摂取するよう意識しましょう。次のような工夫を取り入れることで、無理なく野菜を多く食べることができます。

日常的に過剰な糖分を摂取すると、脂肪肝を引き起こす可能性があります。ごはんやパン、麺類などの糖分を含む食品は適量に留めましょう。また、果糖は体内で素早く吸収され、肝臓で中性脂肪に変わりやすいため、果物の食べ過ぎにも注意が必要です。

緑茶に含まれるカテキンは、肝臓で発生する活性酸素を抑える作用があると注目されています。活性酸素はストレスや紫外線などによって生成され、NASHの発症に関与する可能性があるため、緑茶を摂取することが脂肪肝の予防に役立つと考えられています。

お酒の飲み過ぎが原因で脂肪肝になっている方は、禁酒や節酒を心がけましょう。脂肪肝の初期段階では、2〜4週間の禁酒で改善が期待できることがあります。特に女性や、飲酒後に顔が赤くなりやすい方は、さらに控えめな飲酒量が推奨されます。